学術・アート
2014年09月30日
さて、アベリャネーダの正体についてだ。ポルトガル人がせっせと日本人を奴隷として世界各地で販売していたころ、セルバンテスはスペイン海軍の軍人となり、1571年のレパントの海戦に参加する。このとき左腕に被弾して重傷を負ったことは何度も書いてきた。アベリャネーダはセルバンテスの左手が不自由なことを揶揄(やゆ)するかのように『贋作(がんさく)ドン・キホーテ』の序言にこう記すのである。《片手と言いますのは、ご本人自ら隻手(せきしゅ)だと申されているからであります。それにかの御仁は人のことをとやかくと申されるが、当のご本人についてわれわれは、手先よりも口先ばかりが達者であると申さねばなりますまい》 これを読むだけで、アベリャネーダがセルバンテスに根深い恨みを持った人物であることが想像できる。そこで浮上してくるのが、セルバンテスとともにレパントの海戦を戦ったヘロニモ・デ・パサモンテというアラゴン人である。日本人にはなかなか理解しにくいが、贋作にはアラゴン訛(なま)りが散見されるうえ、この人物、自伝をものするほどの文才を持っていたという。加えて贋作では、キホーテがサラゴサで開かれる馬上槍(やり)試合に向かうが、アラゴン地方の州都であるサラゴサの描写がきわめて正確なのだ。
【鈍機翁のため息】(163)贋作騒動 II 下手人は海戦の戦友か
2014年09月24日
もはやバリャドリードの舗道は歩けない、と感じたセルバンテスは人目を避けるように場末のアパートにこもって、中短編小説の執筆に専念する。それらは『模範小説集』(全12編)を構成する重要な作品となる。『模範小説集』は国書刊行会の「スペイン中世・黄金世紀文学選集」の一冊として出版されている。本人が「模範」と付けるだけあって、いずれもが奇想天外な発想と見事な技巧が融合した逸品だ。
【鈍機翁のため息】(160)ごたごた I 奔放な娘に振り回され…
2014年09月16日
東京・上野の東京国立博物館で開かれていた台北・故宮博物院展(産経新聞社、フジテレビジョンなど主催)が15日、閉幕した。同展は中国歴代皇帝のコレクション186件を日本で初めて公開したもので、計40万2241人が来場した。
台北・故宮博物院展が閉幕 10月7日からは福岡で開催
2014年09月15日
2014年08月31日
2014年08月28日
2014年08月15日
毎年、この時期になると、さきの大戦で戦陣に散った人々を偲(しの)ぶ物語がメディアを賑(にぎ)わす。いつの時代になっても、国のために命をささげた人たちのドラマには胸をうたれる。
【主張】終戦の日と「靖国」 いつまで論争続けるのか